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「21年度JRA賞」馬事文化賞が決定
2022年01月12日 14時55分
「2021年度JRA賞馬事文化賞選考委員会」が開かれ、以下の通り受賞者が決定した。JRA賞馬事文化賞は、当該年度において文学、評論、美術、映画、音楽、写真、公演等を通じ馬事文化の発展に特に顕著な功績のあった者に授与される。また、JRA賞馬事文化賞特別賞は、委員会の推薦があった場合において、理事長が特に必要と認めた時に授与される。
◎2021年度JRA賞馬事文化賞
受賞作:「馬のこころ 脳科学者が解説するコミュニケーションガイド」
受賞者:
(著者)ジャネット・L・ジョーンズ氏
(訳者)尼丁 千津子氏
(編集協力)持田 裕之氏
(出版)パンローリング株式会社
受賞者プロフィール
ジャネット・L・ジョーンズ氏
馬の調教や騎乗者の指導に脳科学を取り入れる認知科学者。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で認知科学の博士号を取得。大規模な厩舎で長年馬の調教を行い、その後、調教関連の事業を立ち上げる。また、様々な馬術競技大会の出場経験をもつ。
尼丁 千津子氏
英語翻訳者。神戸大学理学部数学科卒。主な訳書に『10代脳の鍛え方-悪いリスクから守り、伸びるチャレンジの場をつくる』、『「ユーザーフレンドリー」全史-世界と人間を変えてきた「使いやすいモノ」の法則』などがある。
持田 裕之氏
Hiroyuki Mochida Horsemanship代表。一般社団法人ジャパンホースグラウンドワーク協会理事。ナチュラルホースマンシップの第一人者であり、全国各地で競走馬から乗用馬まで幅広く講習会を開催している。
パンローリング株式会社
主に投資関連の書籍を出版するほか、コンピューターソフトの開発および販売、投資セミナーの企画、物品販売サイトの運営などを行っている。翻訳書についても古典から先進的な研究まで幅広く提供している。
受賞作の概要
著者が馬の調教や騎乗などで体験したことをもとに、馬と関わりをもつ人がどのようにしたら信頼と絆を築くためにコミュニケーションをとり、真のホースマンシップを身につけることができるかを脳科学の観点から解説した作品。
受賞理由
脳科学という新しい視点を用いて馬の行動を分析し、馬を最優先に考えた真のホースマンになるための方法を、自身の体験をもとにした説得力がある内容で、わかりやすく伝えているところが評価されました。
受賞者のコメント
ジャネット・L・ジョーンズ氏:馬事文化賞の受賞にあたり、日本の皆様に感謝申し上げます。特に、JRA、日本の出版社であるパンローリング、そしてアメリカでの出版社であるトラファルガースクエアブックスに感謝いたします。『馬のこころ 脳科学者が解説するコミュニケーションガイド』をアメリカで出版した直後に、パンローリングは外国の出版社として初めて本書の翻訳権を取得しました。日本の読者のためにこのような美しい本を出版していただきありがたく思っております。このたびは本当にありがとうございました。
尼丁 千津子氏:人間と馬のコミュニケーションづくりについて脳科学者で調教師でもあるジャネット・L・ジョーンズさまがわかりやすく解説した、JRA賞馬事文化賞受賞作『馬のこころ』に翻訳者として携わることができてとても光栄です。翻訳の機会をくださったパンローリング株式会社のみなさまと翻訳会社リベルのみなさま、そして難しい専門用語の訳を直してくださった持田裕之さまに、この場をお借りしてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
持田 裕之氏:この度は『JRA賞馬事文化賞』という素晴らしい賞をいただき大変嬉しく思います。私の様な立場でこの様な賞をいただける事には大変恐縮しておりますが、『馬のこころ』の出版に関わらせていただいたことにはとても感謝しております。著者のジャネット・L・ジョーンズ様をはじめ、訳者の尼丁千津子様、出版社の皆様方のお陰と実感しております。ありがとうございました。
パンローリング株式会社:「このたびは、栄えある『JRA賞馬事文化賞』をいただき、大変光栄に思います。まずはこの著書に出会えたこと、そして原著者でありますジャネット・L・ジョーンズ様をはじめ、訳者の尼丁千津子様、編集協力をしてくださった持田裕之様といった多くの方々のご尽力により、このすばらしいタイトルの日本語版を弊社で出版できましたことに感謝いたしております。そして、本書を馬事文化賞の受賞候補に挙げてくださった関係者の方々、選考委員の方々に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
◎2021年度JRA賞馬事文化賞特別賞
受賞作:「馬と古代社会」
受賞者:佐々木 虔一氏、川尻 秋生氏、黒済 和彦氏
受賞者プロフィール
佐々木 虔一氏
古代交通研究会会長。日本古代史を専門とする。主な著作に『古代東国社会と交通』、『地図でたどる日本史』、『日本古代の輸送と道路』などがある。
川尻 秋生氏
早稲田大学文学学術院教授。日本古代史を専門とする。主な著作に『古代東国史の基礎的研究』、『全集日本の歴史4 揺れ動く貴族社会』、『シリーズ日本古代史
黒済 和彦氏
大成エンジニアリング(株)文化財事業部 顧問。日本考古学を専門とする。主な著作に『ものが語る歴史39 蕨手刀の考古学』、『明治大学博物館所蔵の蕨手刀について』、『武蔵国と上円下方墳』などがある。
受賞作の概要
最新の学術研究と調査報告をもとに、広い分野にわたって考古学や文献史学などの多角的な視点から馬が古代社会の中で果たした役割を明らかにし、古代馬文化の解明の進展に寄与するために研究者の力を結集した作品。
受賞理由
古代の馬文化について、幅広い分野の多岐にわたる内容で充実した構成になっており、馬文化の多彩性と奥深さをじっくり認識させてくれる研究の成果が集約された作品になっていることが馬事文化賞に準じる評価を受けました。
受賞者のコメント
佐々木 虔一氏:(本書刊行の目的と意義) 馬は古くから人間とコミュニケーションのとれる家畜として、移動、輸送、労働、農耕、祭祀など多様な役割を果たしてきました。近年、馬の姿を日常生活の中で見ることはほとんどなくなり、馬の文化が消えようとしています。各地の博物館、美術館、資料館などでは馬の文化の記録を残し、展示、出版する努力が続けられています。古代交通研究会では20回大会「馬がつなぐ古代社会」(2019年6月、早稲田大学)を開催し、古代の馬と社会の関わりを明らかにする研究発表と討論を実施しました。その後、さらに馬と古代社会に関する最新の研究論文、調査報告を加えて刊行したのが『馬と古代社会』です。
川尻 秋生氏:この度は、栄えある2021年度JRA賞馬事文化賞特別賞を受賞することができ、喜びで一杯です。本当に有り難うございました。編集に当たっては、なるべく平易な記述を目指すとともに、馬が日本に渡来した古墳時代から摂関期までの時代、東北から九州、そして中国・朝鮮半島を含む地域、文献史学・考古学・日本文学・民俗学などの異分野をカバーすることを心がけ、本書を読めば古代日本の馬の概要が大まかに理解できることを目標としました。コロナ禍のなかにもかかわらず、本書に論考をお寄せ下さった皆様方、そして出版を引き受けて下さった八木書店に感謝いたします。
黒済和彦氏:馬は運搬・農耕・乗用・軍用・競技・信仰・食用等の家畜として、人類の発展に大きく貢献してきました。しかし、我々人類は文明発展による機械化によって、そうした長く馬と共に生きた文化を捨て去ってしまいました。遥か遠い時代に大陸から日本列島に渡り、この地で生きた馬たちの姿を、古代に限定した歴史の一片に過ぎませんが、考古学・文献史学と隣接諸分野による多角的視点を通じ、何かしら紐解くことが出来たかもしれません。本書を刊行するにあたり、お忙しいなか執筆いただきました研究者、そして企画から出版に至るまでご尽力いただきました編集者の方々には、心より感謝いたします。ありがとうございました。